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改正育児・介護休業法が今国会で成立

男性も子育てのための休みを取りやすくする改正育児・介護休業法が、今国会で成立しました。
令和4年4月1日から段階的に施行とのことです。
内容としましては、例えば、男性も子どもの出生後8週間以内に4週間まで2回に分けて「育休」を取得できるようになり、本人又は配偶者から妊娠・出産の申出をした場合に、事業主から個別の制度周知及び休業の取得意向の確認を義務付けることになっています。
(詳細は最下部のリンク資料ご参照)

今回の改正で、休業取得の意向確認を企業に義務化するところまで踏み込んでいるところに、「え、そこまでしないといけないの?」と唐突感を感じる事業主さんも少なくないと思います。

このような場合は、改正の背景や目的にまでさかのぼって確認してみると、見えてくることがありますので、以下解説いたします。

今回の改正のベースに、令和2年12月15日閣議決定された「全世代型社会保障改革の方針」(詳細は最下部のリンク資料ご参照)があります。

その中から、まずは全世代型社会保障という用語説明について、「現役世代への給付が少なく、給付は高齢者中心負担は現役世代中心というこれまでの社会保障の構造を見直し、切れ目なく全ての世代を対象とするとともに、全ての世代が公平に支え合う「全世代型社会保障」への改革を更に前に進めていく。」(「全世代型社会保障改革の方針」P6 第4章終わりに1行目から)とあります。
図示してみますと、次の通りです。

改正育児・介護休業法が今国会で成立

大枠として、これまでの社会保障から「全世代型社会保障」へ改革をしていく目的があることがわかります。

全ての世代の方々が安心できる社会保障制度を構築し、次の世代に引き継いでいく。」(「全世代型社会保障改革の方針」P2 第1章はじめに 2.全世代型社会保障改革の基本的考え方 8行目から)
人生100年時代の到来を見据えながら、お年寄りだけではなく、子供たち子育て世代、さらには現役世代まで広く安心を支えていくため、年金、労働、医療、介護、少子化対策など、社会保障全般にわたる持続可能な改革を検討してきた。」(「全世代型社会保障改革の方針」P2 第1章はじめに 1.これまでの検討経緯2行目から)

全ての世代が安心できる社会保障制度を構築することをめざすには、子供たち、子育て世代を支えること、そして少子化対策(出生率の改善)は重要な要素だとわかります。

少子化対策については「まず、我が国の未来を担うのは子供たちである。長年の課題である少子化対策を大きく前に進めるため、本方針において、不妊治療への保険適用の早急な実現、待機児童の解消に向けた新たな計画の策定、男性の育児休業の取得促進といった少子化対策をトータルな形で示す。」(「全世代型社会保障改革の方針」P2 第1章はじめに 2.全世代型社会保障改革の基本的考え方 10行目から)との記述があります。

改正育児・介護休業法が今国会で成立

ちなみに、高齢化対策としては、「令和4年(2022年)には、団塊の世代75歳以上の高齢者となり始める中で、現役世代の負担上昇を抑えることは待ったなしの課題である。そのためにも、少しでも多くの方に「支える側」として活躍いただき、能力に応じた負担をいただくことが必要である。このため、本方針において高齢者医療の見直しの方針を示す。」(「全世代型社会保障改革の方針」P2 第1章はじめに 2.全世代型社会保障改革の基本的考え方 14行目から)とあり、一定所得以上の後期高齢者の窓口負担の1割から2割への変更などの改正が行われます。(詳細は最下部のリンク資料ご参照)

男性の育児休業の取得促進は、全世代型社会保障の中で重視されている少子化対策(出生率の改善)の1つとして位置づけられていることがわかります。

また、今回の改正趣旨には「出産・育児等による労働者の離職を防ぎ、」(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律案 の概要1行目)(詳細は最下部のリンク資料ご参照)とあります。

人口減少、少子化という構造的な人手不足の中で、離職を防止する、つまり、出産育児をきっかけにした女性(母親)の離職を、男性(父親)の協力で、防ごうという意図が伺えます。

しかし、「令和元年度雇用均等基本調査」結果(詳細は最下部のリンク資料ご参照)によりますと、育児休業取得者の割合は女性 : 83.0% に対して、男性 : 7.48% (平成 30 年度 6.16%)と若干は増えているものの、少ない状態が続いています。その対策として、休業取得の意向確認の義務化まで踏み込むことになったと思われます。

今後、男性の育休取得は、女性の育休取得のように、まずは役所や大企業から浸透していき、徐々に中堅中小企業へと広がっていくことでしょう。

実務的には、就業規則の育児介護規定の変更等が必要になりますので、詳細が公表され次第、再び本ブログでも取り上げたいと思います。

男性の育休取得に加え、働き方改革への対応(時間外労働の削減、有休休暇取得など)、そしてコロナ後には、構造的な人手不足が再燃することが想定されます。

これらの課題に対処していくには、会社として機械化、IT化等による労働生産性の向上努力をさらに推し進め、そして65歳以降のシニア社員の活躍の場をどのように用意していくかなど、積極的な対応が求められると思っています。

参考リンク
○全世代型社会保障改革の方針(令和2年12月15日閣議決定)
https://office-arai.com/blog/pdf/20210613.pdf

○育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法一部を改正する法律案の概要
https://office-arai.com/blog/pdf/20210613_02.pdf

○全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案の概要
https://office-arai.com/blog/pdf/20210613_03.pdf

○厚労省「令和元年度雇用均等基本調査」結果 報道用発表資料
https://office-arai.com/blog/pdf/20210613_04.pdf

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更新日|2021 06 13

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